F _MASTER'S EYE

関数とは

グラフの平行移動

ここまでで、かなり関数に関しての理解が深まったことと思います。ここからは、これまでの知識を利用してグラフの平行移動を理解したいと思います。

恐らくほとんどの高校生の皆さんは$x$軸方向へ1だけ平行移動すると元の式の$x$$ x-1$にするとだけ覚えていると思います。($x$方向に$ +1$移動なんだけど何故か$ -1$するみたいな、一種の法則的な扱いになっていますよね?)それを完全に理屈で理解してみましょう。x軸方向へに戻る

もちろん最後には結局その「x軸方向へ1だけ平行移動すると元の式のxx-1にする」を使います。その方が早いからです。y軸方向へに戻るしかし、軽い問題ばっかり解いてそれで終わりなら問題は無いのですが、大学の入試問題においてそんな「訳わからない法則」を駆使するだけの「法則オンリー」な解き方だけでは、完全に門前払いされてしまいます。

難しいとされる問題をすらすらと解いてみたいですよね?だったら、何でもかんでも公式を暗記!ではなく、何故そのようにするのかという原理を理解してみましょう!大学入試の問題はその原理を問う問題です!



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平行移動の様子

まずは次の式(37)を見てみましょう。

$\displaystyle y=f(x)$ $\displaystyle =x^2 - 2x + 1$ (37)
  $\displaystyle =(x - 1)^2$ (38)

式(37)は平方完成すると式(38)のようになります。これが言っている意味は、頂点が(1, 0)で下に凸の二次関数ですよね?ではグラフにしてみましょう。

図 38: y=f(x)=x2-2x+1のグラフ
\includegraphics[width=.3\textwidth]{gfct20.eps}

ここまではきっとできたと思います。ではこれを$x$軸方向へ1だけ平行移動してみましょう。

図 39: x軸方向へ1だけ平行移動
\includegraphics[width=.3\textwidth]{gfct21.eps}

移動しましたね。このように描くと皆さんはもうグラフから式を作れるのではないでしょうか?
頂点は(2, 0)で、$ x^2$の係数が1、そして下に凸のグラフなので

$\displaystyle y=g(x)$ $\displaystyle =(x - 2)^2$ (39)
  $\displaystyle =(x - 2)^2$ (40)

のようになります。式(39)を展開すると式(40)の形となります。

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式による平行移動の理解

そうもちろん平行移動後のグラフの式の表し方は上のようにグラフから読み取る方法もあります。しかし今後はちょっと違ったことを今の図38と図39から読み取ってもらいたいのです。では今の図38と図39、さらにはもう一つ同じような図を横に並べてみますよ?

図 40:平行移動の3種の図
\includegraphics[width=.8\textwidth]{gfct22.eps}

さて、この3つの図を並べられると気付くことはありませんか?数学的にとか言うつもりはありません。小学生でも気付くことです!

…そう、二次関数のグラフの形が同じだということに気付きましたか?え?グラフの形が同じという意味がわからない?では次の図を見ればわかるでしょうか?

図 41:形が異なるグラフ
\includegraphics[width=.5\textwidth]{gfct23.eps}

わかりましたよね?グラフの形が同じというのは、二次関数の形が同じだということです!

グラフの形が同じということは…何か思い出すことがありませんか?そう「f( )が示すもの」のページで勉強しましたね。「グラフの形が同じ」=「f( )が同じ」ということです!

つまり図40のそれぞれのグラフを表す式$y=f(x)$$y=g(x)$$ y=h(x)$同じ形をしているはずなのです!

式が同じという意味はわかりますか?$y=f(x)$の式の形は今回 $ y=f(○)=○^2 -2○ + 1$の形ですね。つまりこの形をしているということです。y軸方向へから「式が同じ形」を調べに来た人は戻る

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具体的に考える

では、もう一度図38と図39のグラフを並べて考えてみましょう。

図 42:y=f(x)y=g(x)のグラフ
\includegraphics[width=.7\textwidth]{gfct24.eps}

$y=f(x)$$y=g(x)$グラフの形(二次関数部分)がまったく同じなので、式も同じ形をしています。 $y=f(x)=x^2-2x+1$を基準とすると$y=g(x)$ $ y=○^2 -2○ + 1$の形をしているはずです。 $ y=○^2 -2○ + 1$という形は$y=f(○)$で表されるので、つまり $ y=g(x)=f(○)$と表せるということです。では第2式$y=g(x)$$ g(x)$を用いずに$y=f(○)$と表して考えてみましょう。

表1: $y=f(x)$$y=f(○)$の関係
第1式 第2式
$\displaystyle y=f(x)$ $ \displaystyle y=f(○) $
$ \displaystyle x=0 $ $ \mathrm{\unitlength 1mm \begin{picture}(15,3) \put(4,1.3){\vector(1,0){8}}
\end{picture}}$ $ \displaystyle y=1 $ $ \displaystyle ○=0 $ $ \mathrm{\unitlength 1mm \begin{picture}(15,3) \put(4,1.3){\vector(1,0){8}}
\end{picture}}$ $ \displaystyle y=1 $
$ \displaystyle x=1 $ $ \mathrm{\unitlength 1mm \begin{picture}(15,3) \put(4,1.3){\vector(1,0){8}}
\end{picture}}$ $ \displaystyle y=0 $ $ \displaystyle ○=1 $ $ \mathrm{\unitlength 1mm \begin{picture}(15,3) \put(4,1.3){\vector(1,0){8}}
\end{picture}}$ $ \displaystyle y=0 $
$ \displaystyle x=2 $ $ \mathrm{\unitlength 1mm \begin{picture}(15,3) \put(4,1.3){\vector(1,0){8}}
\end{picture}}$ $ \displaystyle y=1 $ $ \displaystyle ○=2 $ $ \mathrm{\unitlength 1mm \begin{picture}(15,3) \put(4,1.3){\vector(1,0){8}}
\end{picture}}$ $ \displaystyle y=1 $
$ \displaystyle x=3 $ $ \mathrm{\unitlength 1mm \begin{picture}(15,3) \put(4,1.3){\vector(1,0){8}}
\end{picture}}$ $ \displaystyle y=4 $ $ \displaystyle ○=3 $ $ \mathrm{\unitlength 1mm \begin{picture}(15,3) \put(4,1.3){\vector(1,0){8}}
\end{picture}}$ $ \displaystyle y=4 $

1を見て下さい。左の第1式の方が$y=f(x)$の式に各$x$を代入したときの$ y$の出力になります。図と見比べてみると簡単に理解できます。

今度は第2式の方をご覧下さい。○で見ると、その○に0〜3を入れたら…$ f(\ )$の形は$y=f(x)$と同じなので、当然$y=f(x)$と同じ値になりました。

ようやく、下準備が出来ました。これから第2式のグラフについて考えたいと思います。

第2式を表すグラフの式$y=f(○)$の○に$x$軸の各値を代入したとき本当に欲しい値はグラフから見たらわかるように、表2のようになります。

表 2: 本当に欲しい関係
第2式
$ \displaystyle y=f(○) $
$ \displaystyle x=1 $ $ \mathrm{\unitlength 1mm \begin{picture}(15,3) \put(4,1.3){\vector(1,0){8}}
\end{picture}}$ $ \displaystyle y=1 $
$ \displaystyle x=2 $ $ \mathrm{\unitlength 1mm \begin{picture}(15,3) \put(4,1.3){\vector(1,0){8}}
\end{picture}}$ $ \displaystyle y=0 $
$ \displaystyle x=3 $ $ \mathrm{\unitlength 1mm \begin{picture}(15,3) \put(4,1.3){\vector(1,0){8}}
\end{picture}}$ $ \displaystyle y=1 $
$ \displaystyle x=4 $ $ \mathrm{\unitlength 1mm \begin{picture}(15,3) \put(4,1.3){\vector(1,0){8}}
\end{picture}}$ $ \displaystyle y=4 $

しかし、現実に○に$ x=1$等を代入すると1が示すように、もとの第1式$y=f(x)$同じ値になってしまいます。では、どうしましょう?

$ x=1$のときには$ y=f(0)$のときの値が、$ x=2$のときには$ y=f(1)$のときの値が、$ x=3$のときには$ y=f(2)$の値が、そして$ x=4$のときには$ y=f(3)$のときと同じ値が欲しいわけです。気付きましたか?つまり第2式のxの値よりも1つ小さいxf(x)に入ったときの値が欲しいわけです。

そう!だったら、y=f(x)xを代入するときにxの値を1つ下げてあげればいいじゃないか!と気付きますよね!BLACK BOXで考えると、入力の前に一つxの値を下げることができるフィルターを入れるというイメージでしょうか。

図 43: そのまま入力したとき
\includegraphics[width=.5\textwidth]{blackbox10.eps}

このままでは入力がそのまま入ってしまいます。そこで、フィルターをかけて入力から1引いた値をBLACK BOXに入力してみましょう

図 44: フィルターを介して入力
\includegraphics[width=.7\textwidth]{blackbox11.eps}

そうすると、入力は第2式の$x$の値のままですが、関数(BLACK BOX)に入力される値は1つ小さなxとなって、その結果出てくる値はその小さくなったxに対応する値となりますね!

どうですか?分かってきたでしょうか?つまりグラフの形が第1式$y=f(x)$と同じ第2式は、式の概形は第1式と同じ$ y=f(\ )$です。ただし、入力する$x$の値をそのまま入れると第1式のグラフと全く同じになって平行移動しませんから、第2式$x$を代入するときにフィルターをかけて1つ$x$の値を小さくするわけです。それを式にすると$ x-1$をして入力するということなので、第2式を表す関数は$ y=f(x-1)$となります。

これが平行移動したのは$x$軸の正方向なのに、代入する値は$ x−1$という様に、1引く作業をする理由です。

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Copyright (C) F_Master All rights reserved. 更新 Monday, 21.05.2012 10:35 pm

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